「写真:黒谷和紙会館」
綾部市は、京都府の中央北寄りに位置している。面積は347.10㎢、人口は3万694人(令和5年4月1日現在)、豊かな自然環境に包まれた田園都市である。
ものづくりを中心とした産業の集積地であり、また京阪神地域や日本海地域をつなぐ交通の要衝地としての特徴を持つ。産業分野においては現在、市内に綾部市工業団地などが造成されているが、過去には繊維業が盛んであった。その歴史には、郡是製絲(ぐんぜせいし)株式会社による養糸業の振興が影響していた。現在では、グンゼ株式会社に社名が変わり、肌着やインナーなどを販売する繊維製品メーカーとして全国に事業を拡大している。
交通面においては、兵庫県三木市と福井県敦賀市を結ぶ舞鶴若狭自動車道や京都府宮津市から京都府南部の大山崎町を結ぶ京都縦貫自動車道、さらにJRの山陰本線と舞鶴線が市内を通る。そのため、北陸や舞鶴港、阪神や山陰などの交流・物流をつなぐ拠点としての強みを持つ。
地域の特産品には、綾部茶や松茸、鮎、黒谷和紙がある。なかでも、黒谷和紙は800年以上の長い歴史があり、破れにくい特長を持つ。京都の伝統産業を支えてきたうちの1つであり、昭和58年には京都府指定無形文化財に指定された。
綾部市は、第6次綾部市総合計画において、医療、職、住、教育、情報発信の5つを課題に挙げている。情報発信の課題については、解決に向けた市独自の取り組みがある。この取り組みは「水源の里」と呼ばれる集落を対象としている。
「水源の里」とは過疎や高齢化が進み、コミュニティーの存続・維持が困難な点など、多くの課題を抱えた集落のことを指す。平成19年にこの取り組みに関する条例(5年間の時限条例)が施行され、同じく4つの目標も掲げられた。目標は①定住促進②都市との交流③地域産業の開発と育成④地域の暮らし向上である。取り組みは市内20集落(令和4年度)に拡大し、現在は水源の里集落や外部団体と連携、定住促進に向けた更なる強化を目指している。
綾部市は豊かな自然環境や歴史・文化など多くの魅力を有しつつ、交流・物流の拠点としても機能している。もし綾部市に訪れる機会があれば、そうした地域の魅力だけでなく、取り組みにもぜひ注目してみてほしい。