本学図書館ナレッジコモンズにて開催された講演会『旅と写真と言葉』に写真家の石川直樹氏が登壇した。石川氏は1977年東京生まれ。学生時代からあらゆる場所を旅し、作品を発表している。講演会では石川氏自身が撮影した写真と共に旅を振り返りながら、現地での出会いや心身の変化について話した。
石川氏が初めての一人旅をしたのは17歳、夏休みの1か月を使いインドとネパールを旅した。両親に反対されたが、嘘をつきこっそりと家を出た。
大学時代は登山家・植村直己氏の著書である『青春を山に賭けて』に影響を受け、アメリカのデナリに登頂した。そこで石川氏は「横に広がるだけでなく上や下にも未知が広がっている」山の魅力に惹かれたという。
その後は大学を休学し、様々な国籍の人と共に旅を続けた。複数の出版社に取材費の出資を依頼しながらの旅であった。大学を卒業後はフリーランスとして活動をしている。
23歳ごろ、写真家になろうと決意すると、旅先で撮影した写真の展示会を開催し、本も出版した。次第に、写真家であり作家でもある椎名誠氏のように文章を書きながら旅をしたいと思うようになり、写真を撮ると同時に文章も書くようになる。旅先での執筆は日々の日記のような役割であり、写真はメモ代わりであるという。
石川氏は本の構成を考える際に、写真と文章を明確に分けるというこだわりを持っている。写真を見る人が文章を読み出来事について納得するのではなく、写真からそれぞれが感じたことを大切にしてほしいと話した。
図書館での講演会ということで読書についての話題も上がった。石川氏は幼少期から多様な読書を通して、読書と旅は同じだと話した。
また、文字がなく口伝えの時代や場所では壁画が図書館のような役割をもっており、今も壁画を描き続けている人もがいることを、先史時代の壁画をめぐる旅で知った。
石川氏は現在も精力的に国内外問わず旅をしている。この秋にも標高8000メートルを超えるシシャパンナという山に登るという。石川氏の旅はこれからも続く。