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『源氏物語の世界―よむ・みる・あそぶ―』京都産業大学ギャラリー特別展


 京都産業大学むすびわざ館2階「京都産業大学ギャラリー」では、1130日まで特別展『源氏物語の世界―よむ・みる・あそぶ―』を開催している。

 特別展では、本学ギャラリーや本学図書館が所有している資料を中心に様々な資料を展示する。

 京都市指定文化財である平安時代の墨書土器(京都市所有)などが展示されている。墨書土器とは、土器に墨で当時の文字を書いたものであり、当時の「文字」が残った資料は極めて貴重だ。

また、本学図書館が所有している、延宝9年(1681年)に書き写された源氏物語が五十四帖展示されている。学芸員の浅子さんは「五十四帖全てが残っている源氏物語は珍しい」と話す。この資料が書き写された江戸時代には識字率が著しく向上した。また、それ以前の時代と異なり紙も貴重品ではなくなったこともあり源氏物語が庶民にも広まったという。

それを示す資料として江戸時代に製作された百人一首かるたや錦絵などの「源氏遊び」に用いられた道具も展示されている。

源氏遊びとは、その場面や登場人物、帖名などを用いた遊びのことを指す。現代に残るものとしては百人一首や投扇興、香道の一つである源氏香などがある。これらの道具を見ることで源氏物語の現代へのつながりを感じることができるだろう。

現代に製作された展示物として、英語、ロシア語、フランス語版の源氏物語も展示されている。英訳は東アジア文学研究者として有名なArthur Waleyによるものであり、この翻訳をきっかけとして海外に源氏物語が広まった極めて重要な本であるといえる。

 

今回紹介したもののほかにも様々な資料が展示されている。浅子さんは、特別展の見どころとして屏風を勧める。「屏風は、きっかけがないと展示することが難しい。今回も10年ぶりくらいの展示であり、いい機会として見て欲しい」と話した。

 

今回の特別展は、2年前から準備を行っていた。当初の予定では昨年実施する予定だったが、むすびわざ館の工事などに伴い延期となっていた。このことを「大河ドラマと同年の実施となって逆によかった。大河ドラマに取り上げられると、これまで関心を抱いていなかった人も興味を持つようになる。また、演者さんのファンの方が展示に足を運ぶこともあり関心の層が広がる」と浅子さんは話す。

 

まだ展示を見たことがない人へ、「様々な源氏物語の楽しみ方があると思う。物語自体への興味、平安時代の装束や歴史的な人物への関心など人それぞれ角度は違う。今回副題に『よむ・みる・あそぶ』と付けたが、ぜひ特別展へ足を運び自分なりの楽しみ方を見つけてもらえれば嬉しい」と話した。

 

むすびわざ館では、特別展に合わせた講演会も予定している。

次回は1123日(土)にむすびわざ館ホールにて開催予定だ。参加費は無料で事前申込制・先着順となっている。ぜひ興味のある方は申し込んで欲しい。


江戸時代の『源氏物語』—江戸の庶民は『源氏物語』をどのように読んだのか—

講師:雲岡梓 氏(京都産業大学文化学部 准教授)

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